推定50年代頃、フランス製『カーキブラウンコットンツイル サイクリストジャケット』になります。
フレンチワークの隠れた銘品でもある "Cyclist Jacket"
その名に "Cyclist(自転車乗り)" の名を冠しながらも、実際にはフランスの工場労働者や運送業者、郵便配達員等に広く支給されていた実用的なワークジャケットとなります。
20世紀初頭から中頃にかけて、フランス国内では自転車が都市部・地方問わず主要な移動手段として浸透しており、労働者階級にとって不可欠な交通手段となっていました。
そのような背景のもと、自転車での移動に適した丈感・動きやすさ・防風性を備えたこのジャケットは、特定の職種に限らず、実用本位で愛用されていた事が知られています。
使用されていたファブリックも多岐に亘り、コットンツイル・モールスキン・コーデュロイ・ウール・レザー等、年代・地域・用途・季節によって様々。
当時は企業や官庁が従業員の為に一括支給するケースが多く、タグに企業名や官給番号が記された個体も現存しており、量産品でありながらも地域色や時代性が色濃く反映された、フレンチワークウェアの隠れた銘品となっています。
細部に宿るのは、合理性と美意識が見事に融合した、当時のフレンチワークウェアの精神。
何と言っても、サイクリストジャケット特有の "ショートレングス設計" が際立つ一着。
ウエストラインで留まる短丈のバランスは、自転車に乗る際や実務の動作を妨げないよう計算されており、今の感覚で見ると非常にモダンでコンパクトなシルエットに映ります。
ボディ全体は無駄を削ぎ落としたストレート構造ながら、背面裾に施されたギャザーによって、腰回りには自然な立体感が加味され、単調になりがちなバックスタイルにさりげない抑揚をもたらします。
両胸部には、実用性と視覚的アクセントを兼ね備えた、斜めに走るジップポケットが左右対称に配置。
この "左右対称の斜めジップ" が、無地のボディにスピード感を与えるディテールで、いわばジャケット全体の顔と言えるでしょう。
前合わせは、ジップファスナーによるジップアップ式を採用。
ジップスライダーは "PROPHETE" 製ジップが採用されています。
ジップは真鍮で、テープが淡いグリーンがかっているのも渋いポイント。
カーキブラウンとの馴染み方が絶妙で、単なるワークに留まらない洒落感があります。
そして、特に当個体の珍しいところは "カラー"。
フレンチらしいインクブルーやブラックが多い印象の中で、このカーキブラウンは明らかに少数派。
ブラウンともオリーブとも言い切れない曖昧なトーンが、フェードやアタリの出方と相性抜群で、時間が作る陰影がそのまま表情になります。
土臭いのに上品、無骨なのに軽快。
そんな矛盾を成立させるのが、この色の強さです。
春秋には一枚で軽やかに羽織るメインジャケットとして、冬場には着丈の短さを活かし、ロングコート等のインナーとしても好バランスを発揮。
重ね着による "奥行きのあるスタイル" を楽しめるという点は、短丈ジャケットならではの魅力とも言えるでしょう。
当個体は "コットン100%" のツイル生地を採用。
目の詰まったツイル特有の斜め畝が立つ質感で、ワーク由来の無骨さの中に、どこか端正な上品さを感じさせる風合い。
しっかりとしたタフさがありながら、着込む程に肩や肘へと馴染み、生地特有のアタリやフェードが陰影として刻まれていきます。
時間と共に味が深まる "フレンチヴィンテージらしい布" です。
カラーは、曖昧さが魅力のカーキブラウンカラー。
ただのカーキでも、ただのブラウンでも表現しきれない、この色の深み。
土埃を含んだ様な "カーキブラウン" は、ミリタリーの力強さとフレンチワークの枯れた品を併せ持った独自の存在感を放ちます。
サイクリスト由来のディテールに、カーキブラウンの柔らかな土っぽさを掛け合わせる事で、ハードさと抜け感が同居する独特のバランスに仕上がっています。
サイズ表記は確認出来ませんが、日本サイズで "L ~ XL" 程度に該当するかと思います。
実寸値を見ても大きなサイズ感となりますので、大きな体型の方でも問題なくご着用頂けるかと思います。
生地特有のアタリ・褪色・汚れ・擦れ・ほつれ等の使用感はありますが、着用に問題のある大きなダメージは見受けられませんので、まだまだご着用可能かと思います。
フレンチヴィンテージを語る上では欠かせない "Cyclist Jacket"
ただ古いだけではなく、当時の背景を語るディテールや生地の特性、その全てが今なお輝きを放つ1着。
現代的なワードローブにも溶け込みながら、確かな存在感を纏えるヴィンテージピースです。
当ショップでも入荷の少ないアイテムとなりますので、お探しの方がいましたら是非この機会をお見逃しなく。