推定60年代頃、上海製『インディゴコットン ワークジャケット』になります。
ヴィンテージでも異質の存在感を放つ "French China Jacket(フレンチチャイナジャケット)"
その名に "China(中国)" の名を冠しながらも、実際には20世紀前半以降、フランスにおける港町や移民コミュニティ、労働の現場へと深く浸透し、やがて都市文化の中でも独自の立ち位置を獲得していった、極めて実用的かつ象徴性の強いワークウェアとなります。
本来は中国で労働者の作業着として着用されていた "Bleu de Chine / Bleu de Shanghai(ブルー・ド・シャンハイ)" と呼ばれるインディゴの作業服が、海運と交易のネットワークを通じてフランスへ渡り、地中海沿岸の港湾都市を中心に、船乗り・漁師・港湾労働者などの生活に根差した衣服として定着していった背景が知られています。
当時のフランス、とりわけ港を抱える都市では、人と物資が絶えず行き交い、異国の実用品が "現場で使える服" として自然に受け入れられていきました。
フレンチチャイナは、そうした時代の空気と共に育まれた、ワークウェアのもう一つの系譜と言えるでしょう。
使用されていたファブリックは主にインディゴ系のコットンが中心で、粗野な織りの表情やネップを含んだ生地感など、個体によって風合いは様々。
着用と洗いを重ねる事で生まれる色落ちは、フレンチワークのフェードとはまた異なる奥行きを生み、ヴィンテージならではの存在感を際立たせます。
また、フレンチチャイナは "フランス製の制服" というよりも、輸入・流通の文脈を色濃く持つ衣服である事も重要なポイント。
フランス側のラベルが付きながら中国で生産され続けた個体や、流通の過程でディテールが変化した個体も存在し、タグ表記や年代差による作りの違いが顕著に表れる為、同じ呼称の中にも多様な背景を抱えています。
その為、量産のワークウェアでありながらも、港町の労働文化、移民史、都市のファッション化といった複数の物語が折り重なり、単なる "ワークジャケット" の枠に収まらない深度を備えた存在として、今なお高く評価されています。
当個体は "上海製のフレンチチャイナジャケット" でありながら、一般的にイメージされるチャイナジャケット特有の前立てとは異なる、同年代のフレンチワークジャケットに酷似した "カバーオール" 然としたデザインが最大の特徴。
丸みを帯びた襟型、フロントはボタンフロント仕様、そして無骨で素直な箱型シルエット。所謂 "フレンチチャイナ" の文脈を残しつつも、見た目は限りなくフレンチワーク寄り。
その絶妙なハイブリッド感が、着用した際の説得力に直結します。
ポケットはフレンチワークジャケットではお馴染みの、片胸ポケット・両裾ポケットの計3つポケット構成。
更に特筆すべきは、インディゴの表情。
フレンチのインディゴとは異なり、より "墨感" のある深いトーンで、上海由来のムードをしっかり感じさせるインディゴ染め。
単に青いだけではなく、沈んだ深みがあるからこそ、合わせるアイテムを選ばず、スタイリング全体を大人っぽく引き締めてくれます。
その深いインディゴカラーに映えるのが、ホワイトカラーの各種ステッチ。
ポケット周り・前立て等に走るホワイトステッチは、視覚的な輪郭を与える "デザイン線" として機能し、ワーク由来の補強ディテールでありながら、ファッション的には抜群のアクセントに。
当個体は "コットン100%" の生地を採用。
但し、生地面に強く現れるネップや、乾いた表情の出方を見るに、リネン混を思わせる様な風合いにも感じられます。
織りは平織りを基調とした印象で、ガシッとしたキャンバスではなく、やや薄めで柔らかい質感。
その為、ワーク由来の雰囲気はありつつも、着た時の当たりが優しい。
タフさではなく、軽さ・柔らかさ・通気性で魅せる生地感。
着込む程にネップの陰影が馴染み、インディゴの色味と相まって、静かに味が増していく経年変化も期待出来るでしょう。
サイズ表記は "54"
日本サイズで "L" 程度に該当するかと思います。
実寸値を見ても大きなサイズ感となりますので、大きな体型の方でも問題なくご着用頂けるかと思います。
経年による多少の使用感は見られるものの、目立った汚れ・傷等も見受けられないグッドコンディションの1着となります。
勿論、着用に問題のある大きなダメージもありませんので、まだまだご着用可能かと思います。
『機能美』という言葉を体現しながら、フレンチワークとは異なる起源と流通の歴史を纏う "French China Jacket" は、フランスの生活圏に根付いた異文化由来のワークウェアとして、素朴で力強い佇まいを今に伝える逸品です。