推定60年代頃、フランス製『ウール ラペルワークジャケット』になります。
フレンチヴィンテージスタイルに欠かせない存在である "Work Jacket(ワークジャケット)"
その名に "Work(労働)" の名を冠しながらも、実際には19世紀末から20世紀中頃のフランスにおいて、炭鉱・工場・鉄道・農場など、様々な現場で働く労働者階級に広く支給・着用されていた、極めて実用的な作業用ジャケットとなります。
当時のフランスでは、産業化と都市化の進展により、多くの労働者が手作業を伴う現場に従事しており、その日々の業務を支える衣服として、このワークジャケットは不可欠な存在でした。
フロントの比翼仕立てや深めのパッチポケット、動きを妨げないボックスシルエット等、過酷な労働環境を想定して設計された実用性本位の構造が特徴で、職種を問わず幅広く支持されていた事が知られています。
使用されていたファブリックも多岐に亘り、コットンツイル・モールスキン・コットンピケ・コーデュロイ・ウール・リネン等、環境・地域・季節によって使い分けられていた事が確認されています。
中でも耐久性と保温性を兼ね備えたモールスキン生地は、重作業に従事する労働者の間で特に高く評価され、現在でもヴィンテージ市場で高い人気を誇る仕様の一つです。
当時は企業や官庁、地方自治体が制服や支給品として従業員に一括配布するケースが多く、内側のタグに企業名や製造業者、支給ナンバーが印字された個体も多く現存しています。
その為、量産品でありながらも生産地や年代によるディテールの違いが顕著で、フランスの労働文化や時代背景を色濃く映し出す存在として、今なお高く評価されています。
『機能美』という言葉がこれ程までに似合うワークウェアは他に無く、"Work Jacket" はフレンチワークウェアの象徴として、素朴で力強い佇まいを今に伝える逸品です。
一般的に市場で多く流通するのは、丸襟(ラウンドカラー)・片胸ポケット・腰左右の計3ポケットで構成された、所謂 "カバーオール型"。
しかし当個体は、その主流から一歩離れた "ラペルカラータイプ" という稀少な設計が最大の魅力です。
小ぶりなノッチドラペルが作るVゾーンは、シャツの第一ボタンを外した抜け感も、タートルやクルーネックを覗かせるレイヤードも端正に見せる設計。
ラウンドカラーより視線が縦に流れ、顔周りがすっきり整います。
左胸部のみのポケットは必要十分な容量に抑え、Vゾーンを邪魔しない高さへ配置。
両裾部には、フラップポケットを左右に配置し、角を僅かに丸めたフラップと低めの取り付け位置により、立ち姿が平面的にならず、手入れの角度も自然に。
前身頃には縦ダーツを取り、直線的なワークシルエットにほど良い立体感を付与。
また、袖は前振り気味で、可動域を確保しつつ見た目はすっきりとした印象となります。
前合わせは、3ボタン留めによる開閉式。
内側には、白地に黒色の "DALIGAULT" 社製の "プリントタグ" が付属。
詳しいブランド詳細は不明ですが、タグ内に "Rue Bergerette, ST HILAIRE du HARCOUËT" の記載がある通り、フランスのノルマンディー地方に位置するサン・ティレール・デュ・アルクエのベルジュレット通りに当時拠点を構えていた事が分かります。
当個体では、フレンチヴィンテージの冬の定番生地である "Wool(ウール)" を採用。
その中でも特筆すべきは、コアな愛好家から厚い支持を集める "Pascal(パスカル)" 製である点です。
Pascal(パスカル)とは、フランス語で "毛織物・服地" を意味する Draperie(ドラペリー)を冠し、ラベルに "Qualité Supérieure(高級品質)" の誇りを掲げるテキスタイル銘。
生地は高密度に織り上げたウールを軽く縮絨する事で、空気を含むふくらみと芯のあるコシを両立。
手に取ればしっとりと反発感が同時に伝わり、体に馴染む過程で表面の微起毛が僅かな艶を帯びる。
正にドラペリーの名に恥じない完成度です。
着用を重ねる程に縫い目やエッジに陰影が刻まれ、立体的なラペルや前振りの袖付けが一層映えるのも、この上質ウールならではの醍醐味でしょう。
カラーは、杢調のチャコールカラー。
黒一色に沈まない微細な杢(メランジ)が奥行きを作り、光の当たり方で濃淡がふわりと入れ替わります。
陰では落ち着いた墨色として凛と佇み、自然光の下では杢の粒立ちが柔らかな表情を引き出します。
ラペル型ワークの端正さを際立たせつつ、経年でトーンが僅かに深まり、表面の艶とコントラストが増す事で "品のある異質さ" が育っていく、完成度の高いカラーリングです。
サイズ表記は確認出来ませんが、日本サイズで "M" 程度に該当するかと思います。
実寸値を見ても日本人体型に合うゴールデンサイズかと思いますので、幅広い体型の方にご着用頂けるかと思います。
汚れ等の使用感はありますが、着用に問題のある大きなダメージは見受けられませんので、まだまだご着用頂けるかと思います。
丸襟カバーオールが多数派の中で、テーラードの所作を備えた "ラペル型ワーク"
更に "Pascal" のタグが付く個体は、お探しの方も多いのではないでしょうか。
当ショップでも入荷の少ない希少なアイテムとなりますので、お探しの方がいましたらこの機会をお見逃しなく。