1962年支給、東ドイツ軍『ブルメンターンカモフラージュ スナイパートラウザーズ』になります。
東ドイツ軍(Nationale Volksarmee / NVA)とは、1956年から1990年までドイツ民主共和国(東ドイツ)の正規軍として機能した統一軍組織であり、ワルシャワ条約機構の主要戦力の一翼を担っていました。
その成立は、第二次世界大戦後に武装警察として整備された "KVP(Kasernierte Volkspolizei=兵営化人民警察)" を母体とし、1956年に正式発足。
編成は、陸軍(Landstreitkräfte)・空軍/防空(Luftstreitkräfte/Luftverteidigung)・海軍(Volksmarine)を中核とし、国境軍(Grenztruppen)は国防省所管の独立部隊として国境警備を担いました。
冷戦期を通じてNVAは、NATO軍と対峙する前線国家の軍として高い規律・徹底した訓練・整然とした指揮系統で評価され、大規模な実戦投入は限定的であった一方、即応態勢と統制の高さで知られました。
戦略上はワルシャワ条約機構の共同計画に基づき、動員計画・装備標準化・共同演習を重ね、国土防衛と同盟任務の双方に備える体制が構築されています。
1990年のドイツ再統一に先立ちNVAは解体され、一部の人員は身分確認を経て連邦軍(Bundeswehr)に編入、装備は処分・再配備の措置が取られました。
これにより、東西で分断されていたドイツの軍事組織は統合へと移行し、NVAの歴史は冷戦の終焉と共に幕を閉じます。
そんな東ドイツ軍より、花柄をモチーフとした "Blumentarn Camouflage" を全体に用いたスナイパートラウザーズのご紹介です。
"Blumentarn Camouflage" は、"M58 Flächentarn Pattern" の名称でも知られ、1956年〜1967年にかけて東ドイツ軍(NVA)及び内務省(MDI)系部隊で支給された初期冷戦期の迷彩パターンです。
その呼称通り "Blumen(花)" を思わせる有機的な斑点が特徴で、フィールドグレーを基調とした地色の上に、青緑・オリーブグリーン・茶褐色の不規則なスポットが重なり合う事で、野外での視覚的分断効果を高めています。
一部には淡色寄りの色調バリエーションも確認され、用途や製造ロットにより抗ガス性の科学薬品コーティングが施された個体も存在します。
当パターンは、ジャケット・トラウザー・装備品・シェルターハーフ(テント片)・フード・ヘルメットカバー等、多様な官給品に採用。
実地での運用前提に、ポケット配置や補強ステッチ、金具類の選定までが機能基準で設計されています。
迷彩柄は勿論ですが、当個体のディテールもミリタリーアイテムらしく、理に適った無骨な印象。
前合わせはボタンフロント仕様。
ボタンはドイツ軍特有の "小石模様" のシートメタルタイプが基本で、濡れ手でも滑りにくい凹凸面が特徴。
ウエスト周りは敢えてベルトループ・サスペンダーボタンを設けない簡潔な構成。
フロントウエスト部には、剥き出しボタン留めのフラップポケットを左右対称に配置。
素早い開閉に適した大径ボタンで、小物類の即時アクセスを想定した設計に。
左右のスラッシュポケットはボタン留めの "貫通式"。
下に重ねた制服やインナーに手を差し入れられる、オーバートラウザーズの運用思想が色濃く反映されています。
大腿部には容量十分のフラップ付きカーゴポケットも配置。
膝はダブルニー仕様の当て布補強、更に背面ヒップには大判のシート補強を採用。
匍匐前進や膝立ちで酷使される部位の耐摩耗性を高めています。
裾には、ドローコードが付属。
ブーツの上から被せる・絞って風の侵入を防ぐなど、フィールド前提の可変性を確保し、外側の補強パネルと相まって、裾口の耐久性も高めています。
内側には、東ドイツ軍を証明する "NVA" の表記を始め、サイズ表記や支給年のスタンプも確認が出来ます。
シルエットは、ミリタリーパンツらしい "太めのストレート"。
股上は深めで腰位置が安定し、腿に十分なゆとりを持たせつつ、裾へ向かってストンと落ちる直線的なライン。
裾のドローコードを絞ればブーツに沿うテーパード風の表情も作れます。
ストレートシルエットは、縦のラインを強調して脚をまっすぐ長く見せる効果があり、体型を問わず美しいバランスを演出。
オーバートラウザーズ特有の包容力がありながら、パネル切り替えと大型ポケットの配置が視覚的な縦の陰影を生み、野暮ったさを感じさせません。
当個体は "コットン100%" 生地を採用。
目の詰まった平織り(ポプリン調)のファブリックで、軽さとコシを併せ持つドライタッチ。
無骨なタフさを宿しながらも、表面は均一で滑らか、荒々しさの中にほのかな上品さが漂う質感です。
実用本位の素材感ながら、着込み・洗いを重ねる程に繊維がほぐれて身体に自然と馴染み、プリントの縁にアタリや擦れが現れていく経年も魅力。
硬さが程よく抜け、しなやかに落ちる生地感へと育っていきます。
サイズ表記は "2"
日本サイズで "L" 程度に該当するかと思います。
実寸値を見ても大きなサイズ感となりますので、大きな体型の方でも問題なくご着用頂けるかと思います。
元々制服の上から着用する事を想定とした、オーバートラウザーズの用途で作られていますので、基本的にどの個体に関してもサイズ感は大きくなっています。
褪色・汚れ・リペア跡・ボタンの付け替え・ボタン欠損等の使用感はありますが、着用に問題のある大きなダメージは見受けられませんので、まだまだご着用頂けるかと思います。
数あるヴィンテージミリタリーの中でも、冷戦期を象徴する東ドイツ軍(NVA)の希少仕様。
短命かつ限定支給で知られる "Blumentarn(ブルメンターン)" 迷彩を全面に纏った、迷彩好きには堪らない一着です。
ワードローブの核としては勿論、コレクションピースとしても申し分のない一本。
当ショップでも入荷の少ない希少なアイテムとなりますので、お探しの方がいましたらこの機会をお見逃しなく。