1963年支給、カナダ海軍『インターミディエイト コールドウェザー デッキ ジャケット』になります。
スペシャルアイテムの入荷です。
カナダ海軍(Royal Canadian Navy)とは、カナダ軍(Canadian Armed Forces)の海上戦力として、国家の主権・海上交通・沿岸防衛を担ってきた組織であり、その制度的な出発点は1910年に制定された『Naval Service Act(カナダ海軍法)』にあります。
この海上戦力は、当初『Naval Service of Canada』として歩み始め、1911年8月16日、国王ジョージ5世によりカナダの海軍部隊を『Royal Canadian Navy(RCN)』と指定する事が認可されました。
第二次世界大戦において、RCNの存在感は決定的に拡大します。
大西洋を横断する補給線を守る『Battle of the Atlantic(大西洋の戦い)』は、連合国側にとって戦争遂行そのものを左右する生命線であり、RCNは護送・哨戒を中心にこの戦いへ深く関与しました。
その結果、開戦時に6隻・3,500名規模だった戦力は、終戦時には人員95,000名・就役艦艇434隻へと膨張し、『世界第3位の規模の海軍』とされる段階に到達しています。
戦後もRCNは、朝鮮戦争期にカナダの駆逐艦が海上封鎖、空母防護、沿岸砲撃などに従事した様に、カナダの国際関与と海上戦力の運用を継続していきます。
その一方で、1960年代後半のカナダ軍再編(統合)の流れの中で、1968年には『RCNは単独軍種としては存在しなくなり』、海上戦力はCanadian Forces Maritime Command(海上コマンド)へ移行。
しかし歴史的呼称と伝統は断絶せず、2011年8月16日、Maritime Commandは再び『Royal Canadian Navy』という名称を回復し、RCNの名は公式に復活する事となりました。
カナダ海軍由来のミリタリーアイテムが放つ独特の説得力は、単なる意匠ではなく、海上輸送・護送・沿岸警備という国家の実務が積み重ねた時間そのものに根ざしています。
そんなカナダ海軍にて、艦艇作業着として支給・着用されていた "Intermediate Cold Weather Deck Jacket" のご紹介です。
ミリタリーヴィンテージの文脈で語られる "デッキジャケット" という存在の中でも、これはかなり異色のカナダ官給品。
内タグに『JACKET, INTERMEDIATE COLD WEATHER / AUG. 1963 / HOLDEN MFG. CO. LTD.』と明記された、1963年8月支給の Royal Canadian Navy(カナダ海軍)用 "中間寒冷地" ジャケットです。
アメリカ海軍の "N-1 Deck Jacket" を彷彿とさせる "艦上装備らしい硬派さ" をベースにしつつ、フード一体型のフーデッドジャケットとして成立している点が、このモデルを唯一無二にしています。
まず目を惹くのが、フード内側・襟部が全面コーデュロイで切り替えられている点。
同系色の濃紺〜墨黒トーンで纏めながら、コーデュロイ特有の畝がしっかり陰影を作る為、ミリタリーの機能服でありながら "素材の表情" が主役になる設計です。
フード周りは擦れやすい場所なので、起毛感のあるコーデュロイが当たる事で、肌当たり・防風性の両面で理に適っています。
ポケット周りは、 所謂N-1的な文法を踏襲しつつ、カナダらしい端正さが際立つ。
ジャケット中部にはボタン留めのフラップハンドウォーマーポケットを配置。
フラップ形状も小ぶりで収まりが良く、野暮ったさではなく『実用品の端正さ』に寄せたバランスと言えるでしょう。
袖先は、内側にリブニットを仕込んだ二重構造式。
外気の侵入を抑えつつ、作業時の腕の動きにも追従する "実用の為の贅沢" がここにあります。
更に脇下付近には、金属ハトメ(ベンチレーション)も設けられており、蒸れを逃がす配慮が入っている点も、艦上=行動前提の装備として非常に納得感のある作り。
本来は両裾にサイドアジャスターが付属する仕様ですが、当個体は欠損。
但し、その名残(ループ)は確認でき、年代物らしい "失われた機能" も含めて、ヴィンテージのリアリティとして残っています。
前合わせは、ジップファスナーとボタン留めの二重構造式を採用。
ジップスライダーには "CLIX" 社製ジップが採用されており、艦上装備らしいヘビーデューティーなメタルファスナーが確認出来ます。
ボディは、写真からも分かる通り非常に密度の高いシェルで、風を受け止める "壁" の様な面構え。
素材表記は不明ですが、諸説として 防風・防水加工を施した高密度コットン2層の間に厚手のウール層を挟んだ構造が挙げられ、更に当個体は触感イメージから "ウールギャバジン" の様な表情も感じられます(いずれも現物観察ベースの推測となります)。
裏地は、密度の高いパイル状(ボア状)のライニングが全面に入り、見た目にも触感的にも "温度" のある質感。
ウール・アクリルの様なニュアンスで、艦上の冷え込みに対して現実的な保温力を狙った "Intermediate" の名に恥じない仕様です。
カラーは、ブラックを漂わすダークネイビーカラー。
所謂ネイビーの軽さではなく、黒に寄せた深い沈み込み。
ただのブラックでは表現しきれない "青みの気配" が奥に残る事で、光の当たり方次第で微妙に揺らぐ、立体的な濃度が生まれます。
この濃色は、ミリタリーでありながら "黒物"の感覚で扱えるのが強み。
デニム・チノ・ウールスラックスまで受け皿が広く、合わせる色を選ばずにスタイリングを締めてくれるかと。
サイズ表記は "44"
日本サイズで "L" 程度に該当するかと思います。
実寸値を見ても日本人体型に合うゴールデンサイズかと思いますので、幅広い体型の方にご着用頂けるかと思います。
ミリタリーアイテムらしく、大きめのサイズ感でガバッと羽織って頂いても格好良いかと。
汚れ・ほつれ・小穴・リペア跡・ボタンの付け替え・裏地の毛抜け・サイドアジャスター欠損等の使用感があります。
また、ジッパーテープ下部にほつれがございますが、現状ジップの開閉は問題なく行えます。
開閉時は無理に力を掛けず、丁寧に扱って頂けると、より永い期間ご着用頂けるかと。
1910年の制度的起点から大西洋護送で存在感を拡大し、海上実務の積み重ねで装備を磨いてきた "Royal Canadian Navy"
艦上という過酷な環境に最適化された官給品には、意匠ではなく "必要" が生んだ説得力があります。
US物の影に隠れがちなカナダ官給デッキは、そもそも市場流通が限られる希少カテゴリー。
1963年支給の個体となれば尚更で、出会える機会は多くないかと。
ワードローブとしては勿論、コレクションアイテムとしても申し分ない1着かと。
国内外問わず滅多にお目にかかれない逸品かと思いますので、探されていた方や珍しいアイテムが好きな方はこの機会をお見逃しなく。