1988年支給、チェコスロヴァキア人民空軍『ヘリコプタークルー パイロットジャケット』になります。
チェコスロヴァキア人民空軍(Czechoslovakian Air Force / Československé letectvo)とは、1918年の国家成立と同時に創設されたチェコスロヴァキア陸海空の空軍部門であり、1918–1992の全期間を通じて国家の制空・防空を担った正規空軍。
現在は、チェコ共和国(Czech Republic)とスロヴァキア共和国(Slovak Republic) とに分裂して別々の国家となっていますが、かつて両国は1918年から1992年まで『チェコスロヴァキア共和国(1918–1960)』・『チェコスロヴァキア社会主義共和国(1960–1990)』という統一国家を構成しており、人民軍はその期間を通じて国家軍として存在していました。
スローガンは『われらの海は空にあり(Our sea is in the air)』。
冷戦期(1954–1990)はチェコスロヴァキア人民軍(ČSLA)の一部として再編・運用され、1993年の国家分離に伴い資産・部隊はチェコ空軍とスロヴァキア空軍に分割継承されました。
起源は第一次世界大戦直後。
オーストリア=ハンガリー帝国から引き継いだ限られた航空資産を基に急速に整備が進み、『Aero・Avia・Letov』等の国産航空工業が勃興。
訓練制度の整備と共に1930年代には欧州有数の空軍として評価されました。
これは、外部設計のライセンス生産から独自設計へ移行し、国産のB-534戦闘機やB-71等を運用した事実に裏づけられます。
戦後、1948年の共産化を経て1954年にČSLA(人民軍)が正式発足、空軍もソ連式ドクトリン・装備体系へと全面転換。
1989年のビロード革命で一党支配が終焉。
1990年に『人民』の語を外したチェコスロヴァキア軍へ改称し、1993年の国家分離に伴い、空軍戦力はチェコ:スロヴァキア = 約2:1で分割。
これによりチェコ空軍 / スロヴァキア空軍が発足し、チェコスロヴァキア人民空軍は歴史的役割を終えました。
そんなチェコスロヴァキア共和国時代に、チェコスロヴァキア人民空軍のパイロットクルーにて着用されていたと思われるのが当個体となります。
この個体の持つ最大の魅力は、ミルスペックに忠実でありながら、ファッション的視点から見ても非常に完成度の高いディテール群にあります。
まず特筆すべきは、当個体が『オリジナルのボア襟』をしっかり残した個体であるという点。
前回入荷していたモディファイ個体ではボア襟自体が取り払われていた為、襟裏に備わるベルクロストラップを活かした "襟を立てて留める" 着こなしが出来ませんでしたが、当個体はそのディテールがしっかり生きているのが魅力です。
ボア襟を寝かせればクラシックなフライトジャケットらしい表情に、ストラップで襟を立てて留めれば、首元をしっかりと防風しつつ、スタンドカラーの様なシャープなルックスに変化。
スタイリングに応じて表情を切り替えられる、ファッション的にも実用面でも嬉しい仕様です。
胸部には、チェコスロヴァキア軍特有のアシンメトリー構造が際立つ、縦長のスリットポケット・斜めに傾いたジップポケットを配置。
そのどれもが戦闘機・ヘリの操縦時に干渉しにくい構造を意識しており、用途と目的が明確な "デザインに意味がある" 作り込みが見て取れます。
両裾部にはジップ仕様のハンドウォーマーポケットが配されており、これらには "WICO" 製のオリジナルジップスライダーが採用されています。
袖先には、2段階調節が可能なベルクロタブ + ジップの二重構造を採用。
グローブ着用を想定した開閉設計が施され、ファッションアイテムとしてはもちろん、ミリタリーウェアとしての実用性も存分に体現しています。
腰回りにも同様のベルクロタブが設けられており、ウエストラインの調整や風の侵入を防ぐ役割を担っています。
フロントジッパーはオフセンターに配置されており、寒冷地での体温保持に優れた構造。
内側にはキルティングライナーが仕込まれ、当時の寒冷地対応が想定されていた事を物語っています。
前合わせは、ジップファスナーによるジップアップ式。
当個体ではファスナー交換が施されており、ジップスライダーには、"KIN" 刻印ジップが採用されています。
内側には、サイズ表記や支給年の記載がされたスタンプも確認が出来ます。
スタンプ内に "1988" の文字が確認できる為、当個体は1988年に正式に支給されていた物と思われます。
当個体では、"コットン100%" の高密度サテン織生地を採用。
きめ細やかでしっとりとした質感に、ほんのりと光沢を帯びた滑らかな表面。
サテン織ならではの上品な表情が、カジュアルなアイテムにさりげない格調を与えています。
カラーは、落ち着きのあるブルーグレーカラー。
知性と穏やかさを兼ね備えたブルーグレーは、ブルーの清涼感とグレーの落ち着きを絶妙なバランスで融合した、洗練されたニュートラルカラー。
どんなスタイルにも馴染みやすく、それでいて一味違う雰囲気を纏える、上級者好みの色味と言えるでしょう。
アーバンミリタリーの要素を感じさせるディテールとの相性も抜群で、無骨さの中にも知的な空気感が漂います。
サイズ表記は確認出来ませんが、日本サイズで "XL" 程度に該当するかと思います。
実寸値を見ても大きなサイズ感となりますので、大きな体型の方でも問題なくご着用頂けるかと思います。
ミリタリーアイテムらしく、大きめのサイズ感でご着用頂いても格好良い1着かと。
生地特有のアタリ・汚れ・擦れ・ファスナー交換等の使用感はありますが、着用に問題のある大きなダメージ見受けられませんので、まだまだご着用頂けるかと思います。
当店でも2回目の入荷である、チェコスロヴァキア人民空軍の珍品であり逸品の当個体。
大変マニアックな1着ですが、古い年代のチェコスロヴァキア軍は、抑えておいて間違いないかと個人的には思います。
ワードローブとしては勿論、コレクションアイテム・デザインソースとしても申し分ない1着。
国内外問わず滅多にお目にかかれない逸品かと思いますので、探されていた方や珍しいアイテムが好きな方はこの機会をお見逃しなく。