推定80年代頃、フランス製『ディフォームドデザイン デタッチャブルスリーブブルゾン』になります。
フランスという国のプロダクトには、時折、説明を拒む様な個体が紛れ込んでいる事があります。
見慣れたカテゴリーに収まりきらない、既存の言葉では形容しがたい何か。
でも目の前にあるそれは、確かに "服" であり、しかも恐ろしく格好良い。
今回入荷してきたこちらは、正にそんな類の一着です。
内側の素材タグにはフランス語で "VERITABLE MOUTON / DOUBLE FACE / TISSU(本物のムートン/ダブルフェイス/ファブリック)"、そして "FABRIQUE EN FRANCE" の表記がしっかりと残されています。
つまり、正真正銘のフランス製。しかもリアルムートン使用。
この時点で、もう心が躍るのを抑えられない訳ですが、この個体の真骨頂はそんな素材の贅沢さだけに留まりません。
何よりもまず、目を奪われるのが、肩口から身頃を縦断する様に垂れ下がるエクリュカラーのウェビングストラップ。
太めのコットンウェビングが、フロントでは肩からDリングを経由して裾方向へ、バックでも同様に肩から背中を通って腰付近までラインを描いています。
これが実に不思議で、機能的な意味での役割は持っていない、純粋なるデザインエレメントなんです。
サスペンダーの様でサスペンダーではない。ハーネスの様でハーネスでもない。
しかし、この "何にも属さない" ストラップが存在する事で、ワークウェアとも、ミリタリーとも、モードとも言い切れない、カテゴリー不在の独自の世界観が立ち上がっている。
こういうデザインアプローチは、論理で詰めていくモノづくりからは生まれにくい。
感覚と直感を信じる、フランスという国の美意識が生んだ、正に唯一無二のディテールです。
そしてこのブルゾン最大のギミックとも言えるのが、袖の着脱機構。
両肩のアームホール部分にYKK社製のメタルジップが走っており、ジップを開けば袖がまるごと外れる構造になっています。
つまり、袖を付ければブルゾンとして、外せばベストとして。
1着で2つの顔を持つ、2WAY仕様のプロダクトです。
これが実にスタイリングの幅を広げてくれる。
ベストの状態であれば、ジャケットやニット、スウェットの上からさらりと重ねる事が出来るので、秋口のレイヤードスタイルにおけるアクセントピースとして機能しますし、袖を付けた状態であれば、しっかりとしたアウターとして真冬手前まで対応可能。
季節の変わり目をこの1着でシームレスに繋げるという、ある意味で最も実用的な贅沢がここにあります。
襟元には、たっぷりとボリュームのあるリアルムートンが贅沢にあしらわれています。
クリーム色のムートンが、キャメルブラウンのボディに対して柔らかなコントラストを生み出しており、首元に顔を埋めた時の包み込まれる様な温かさは、化繊では絶対に再現出来ない、天然素材ならではの心地良さ。
両裾に配されたポケットもまた、実に凝った造り。
ポケットの本体部分にはレザーファブリックが採用され、その上縁にはムートンのボアが覗く構造。
異素材が小さなポケット一つの中で共存しているこの贅沢さ。
キャメルブラウンのコットンキャンバス、同系色のレザー、そしてクリーム色のムートン。
この3つのマテリアルが、一つのポケットの中で見事にグラデーションを成しているんです。
前合わせは、トップとボトムの2箇所に配されたスナップボタンと、その内側に隠された比翼仕立てのジップファスナーによる二重構造式を採用。
ジップスライダーには "YKK" 社製のメタルジップが採用されており、堅牢性と信頼性は折り紙付き。
生地は、表地にコットンキャンバス・ポケット部にレザー・襟及びポケット縁にリアルムートンという異素材の饗宴。
コットンキャンバスは、所謂アメリカのワークウェアに用いられるダック地に近い、しっかりとした肉厚さを持っています。
経年により適度にこなれた風合いは、新品のパリッとした硬さとは一味違う、身体に馴染んだ柔軟性と味わい深さを兼ね備えています。
カラーは、温かみと落ち着きが同居するキャメルブラウンカラー。
秋冬の枯れた風景の中に溶け込む様な、でも存在感はしっかりと主張する。
そこにクリーム色のムートンとウェビングストラップが加わる事で、全体のトーンがワントーンのグラデーションに収まり、素材の切り替えが多いにもかかわらず、不思議なほどの統一感を保っています。
ブラウン系のワントーンスタイリングで纏めるのも粋ですし、逆にネイビーやオリーブグリーンといった濃色のボトムスでメリハリをつけるのも正解かと。
サイズ表記は確認出来ませんが、日本サイズで "L" 程度に該当するかと思います。
実寸値を見ても日本人体型に合うゴールデンサイズかと思いますので、幅広い体型の方にご着用頂けるかと思います。
汚れ・擦れ・ほつれ・ムートン部分の毛抜け等の使用感はやや見受けられます。
また、袖部のジッパーテープにほつれがありますが、現状ジップファスナーの開閉に問題はございません。
開閉の際は慎重にお取り扱い頂く事で、永くお召し頂けるかと思います。
全体としてはヴィンテージとしては相応のコンディションであり、着用に支障のある大きなダメージは見受けられませんので、まだまだご活躍頂けるかと思います。
3つの素材が一つのジャケットの中で交差し、そこにデタッチャブルスリーブという機構と、カテゴリー不在のストラップデザインが加わる。
これだけの要素を詰め込みながらも、全体として破綻なく纏まっている。
それはひとえに、フランスという国のモノづくりが持つ、理屈を超えたバランス感覚の賜物でしょう。
ヴィンテージの真髄に触れたい方、ワードローブに "説明出来ないけれど格好良い" を加えたい方にお勧めしたい逸品です。
今後も出会える保証の無い、極めて特異な1着となりますので、是非この機会をお見逃しなく。