推定80年代頃、イタリア製『Dリングストラップフロントデザイン デニムブルゾン』になります。
1965年、イタリア・ヴェネト州の小さな街で4人の兄弟姉妹によって産声を上げた "benetton(ベネトン)" 。
鮮やかなカラーニットで世界を席巻し、80年代には挑発的な広告キャンペーンと共にイタリアンカジュアルの代名詞的存在にまで上り詰めたブランドですが、このジャケットを目の当たりにすると、彼らの "攻め" の姿勢は何もビジュアル広告だけに留まるものではなかったんだなと、改めて思い知らされます。
というのも、これがもう、良い意味で狂っている。
デニムジャケットの前合わせに、ボタンでもジップでもなく、Dリングとストラップによる開閉式を採用しているんです。
フロントセンターに5本のデニムストラップが整然と並び、それぞれが真鍮色のDリングを通してベルトの様に固定される構造。
デニムジャケットの歴史を振り返っても、このアプローチはかなり異端と言えます。
しかもこのストラップ、ただの装飾ではなく、実際にフロントの開閉を担う主役としてしっかり機能しています。
ボタンやジップとはまるで違う、この一手間がかかる "儀式" のような着脱動作が、着る行為そのものに特別感を与えてくれる。
ディテールの密度も、実に見応えがあります。
左前身頃にのみ配置された縦型のベルクロ留めポケットもまた、秀逸。
左右対称に配さないというこの選択は、前述のフロントストラップのデザインバランスを崩さない為の計算であると同時に、着用時の表情に非対称の面白さをもたらしています。
両裾部には、スナップボタン留めの大振りなフラップポケットを左右に配置。
三角形のフラップに真鍮色のスナップボタンが一つ。
このポケットのフラップ形状がまた独特で、一般的な四角形ではなく、斜めにカットされたシャープなシルエットが、全体にモダンなアクセントを加えています。
そして裾部の両サイドには、フロントと同じDリング仕様のサイドベルトが備わっており、裾幅の微調整が可能。
絞ればコンパクトに、緩めればリラックスしたシルエットに。
このディテールの統一感もまた、プロダクト全体の完成度を底上げしています。
裏地を開くと、思わず息を呑むような光景が広がります。
ブラックウォッチ柄のダイヤモンドキルティングが、裏地全面に贅沢に張り巡らされているんです。
ネイビーとグリーンが織りなすこの伝統的なタータンチェックは、元々スコットランドの軍事的な文脈を持つ由緒正しき柄。
それがイタリアンブランドのデニムジャケットの内側に忍ばせてあるという、この文化のレイヤリング。
しかもダイヤモンドキルティングが施されている事で、見た目の美しさだけでなく保温性も確保されており、季節的には秋冬に対応可能な1着として機能してくれます。
生地は、"コットン 100%" のデニム生地を採用。
適度にウォッシュの入ったインディゴデニムは、硬すぎず柔らかすぎずの絶妙な風合い。
新品のデニムにありがちなゴワつきは無く、身体に馴染んだ柔軟性を持ちながらも、しっかりとした肉感を保っています。
経年によるアタリといったエイジングも自然に入っており、寧ろこのコンディションこそが、デニムという素材の真骨頂と言えるでしょう。
カラーは、経年変化によって絶妙なムラ感を帯びたインディゴフェードカラー。
一口にインディゴフェードと言っても、その表情は千差万別。
当個体は、全体的にミディアムブルーへと褪色が進みつつも、縫い目周辺やポケットのフラップ部分にはオリジナルの濃いインディゴが残っており、この濃淡のコントラストが実に味わい深い。
サイズ表記は "44"
日本サイズで "M ~ L" 程度に該当するかと思います。
実寸値を見ても日本人体型に合うゴールデンサイズかと思いますので、幅広い体型の方にご着用頂けるかと思います。
やや短めの着丈に対して、しっかりとした身幅が確保されており、80年代らしいボクシーなシルエットが特徴的。
インナーにニットやスウェットを挟んでも窮屈さを感じさせない、程良いゆとりのある作りです。
褪色・生地特有のアタリ・汚れ等の使用感はやや見受けられますが、着用に問題のある大きなダメージは見受けられません。
ボタンでもジップでもない、Dリングストラップで前を留めるデニムジャケット。 そんなものが存在すること自体が面白いし、しかもそれがちゃんと格好良いのだから、もう降参するしかありません。
ヴィンテージの奥深さに触れたい方、ワードローブに "語れる1着" を加えたい方に、心からお勧めしたい一着です。
今後も出会える保証の無い、極めて希少なデザインですので、是非この機会をお見逃しなく。