推定90年代頃、SASS(Special Air Sea Services)製『DPMカモフラージュ リップストップ ウィンドプルーフスモック』になります。
スペシャルアイテムの入荷です。
SASS(Special Air Sea Services)とは、イングランド北西部ランカスター(Lancaster)の拠点で、ミリタリー仕様のスモック・ベスト等、高度な軍用仕様の装備品を製造・販売していた、軍用品メーカーとなります。
小規模メーカーだった為か殆ど詳細は明かされておりませんが、主に1980〜2000年代初頭にかけて活動していたとされています。
イギリス国防省(MOD)が発注する正式な官給装備には、NSN(NATO Stock Number)や納入契約番号などが必須ですが、SASS製品にそうした正式仕様が記録された例が無い為、恐らく官給品としての製造は担っていなかったと推測されます。
但し、一部の特殊部隊員(SBS・SAS等)では、官給品に満足出来ない場合に私費購入や任務指定装備としての製品使用がある為、個人調達装備として一部隊員に使われた可能性はゼロではないかと。
SASSが製造する衣服は民間品でありながらも、市場での流通が殆ど無く、これらの背景を知っているミリタリーコレクター内では高値で取引されています。
そんなミリタリーコレクターから絶大な支持をされているSASSより、ブリティッシュミリタリーの機能美と堅牢性を高次元で融合させた、実用性とデザイン性を兼ね備えた1着のご紹介です。
"DPM(Disruptive Pattern Material)Camouflage" は、1960年代後半にイギリス陸軍により初めて正式採用された、近代的ミリタリーカモフラージュの先駆けとも言えるパターン。
その名の通り "Disruptive(輪郭を乱す)" 事を目的とした当パターンは、第二次世界大戦期の "Brushstroke Camouflage" や "Windproof" パターンの系譜を継ぐ存在でありながら、より細分化された色調の重なりによって、自然環境への溶け込みやすさを格段に高めたデザインとなっています。
当初は "1966 Pattern" の戦闘服で初導入され、その後改良を重ねた "1968 Pattern" 以降、官給ユニフォームや装備におけるスタンダードとして長らく英国軍全体に広く採用。
標準構成としては、"ブラック × ダークブラウン × レッドブラウン × オリーブグリーン" の計4色からなる "木々の影や地形の起伏" を模した柄で構成され、主に温帯気候のヨーロッパ地域に最適化された設計とされています。
また、1970年代以降はSAS(Special Air Service)やRoyal Marines(王立海兵隊)などの特殊部隊にも愛用され、DPMの中でもより耐風性や撥水性に優れた "Windproof Smock" バリエーションが登場。
特殊作戦下での信頼性の高さから、冷戦期を通してNATO各国にも多大な影響を与えたとされています。
更に、旧植民地や友好国にも余剰在庫が供与され、南アフリカやオマーン・マレーシア・カタール等、各国軍のカモフラージュデザインにも多くの派生バリエーションが見られるなど、その普及範囲は非常に広大です。
イギリス軍では2000年代中頃から "Multi-Terrain Pattern(MTP)" への移行が進んだものの、DPMパターンは現代でも根強い人気を誇り、ヴィンテージミリタリーウェアとしての歴史的価値も非常に高く評価されています。
そんなDPMカモフラージュを纏った当個体のディテールを見ていきましょう。
前身頃には、官給品のウィンドプルーフスモックに見られる特徴的な4ポケット構成を踏襲。
上段に配された左右の胸ポケットは、ボタン留めのフラップ付き。
フラップのボタンにはラバーコーティングが施されたミリタリー仕様のものが採用されており、悪天候下での操作性と防水性を考慮した設計となっています。
下段の裾ポケットも大容量で立体的な作りとなっており、ツールや小物の持ち運びにも便利です。
フードはしっかりと厚みのある構造で、ドローコードにより自在にフィット感を調整可能。
フードのドローコードストッパーには、スウェーデン・ヨーテボリの "FIXFABRIKEN" 社製 "Fixlock" が採用されている点も見逃せないディテール。
ミリタリーギア好きならばご存知の方も多いかと思いますが、このFixlockはNATO各国の軍装備に広く採用された信頼性の高いコードストッパーであり、片手でもスムーズに操作出来る堅牢な設計が特徴です。
前合わせは、ベルクロ + ダブルジップの二重構造を採用。
風の侵入を防ぎながら、素早く開閉可能な仕様は、悪天候下での運用を前提とした高機能ディテール。
ジップスライダーには "OPTI" 社製ジッパーが採用され、布製プルタブが付属。
グローブ装着時でも操作し易い実戦仕様の設計がなされています。
また、ウエスト部・裾部内側にはそれぞれドローコードを完備。
ウエスト部のドローコードは着用時のシルエット調整に加えて防風性と保温性を高める役割を担い、裾部のドローコードは冷気の侵入を遮断すると共に、絞り具合によってシルエットのニュアンスを変化させる事も可能です。
前回入荷のSASS製スモックでは、ベルクロストラップが採用されていましたが、当個体ではオリーブカラーのニットリブ編みカフスが袖口に縫い付けられています。
このリブカフスの存在は、実用面でもスタイリング面でも大きな意味を持ちます。
まず実用面では、手首にしっかりとフィットする事で袖口からの冷気の侵入を効果的に遮断。
ベルクロとは異なり、伸縮性のあるリブ編みならではの追随性で、どんな手首の太さにも自然に馴染みます。
スタイリング面では、大きめのサイズ感であっても袖先でリブが生地を溜めてくれる為、小柄な体型の方でもだらしなくならず、寧ろ袖にクシュっとしたボリュームが生まれ、独特のミリタリーシルエットを楽しめるのがポイント。
生地表面に見られる格子状の織りが "リップストップ" の証。
万が一のダメージが起きた際にも、それ以上の広がりをしっかりと抑え込む構造となっており、耐摩耗性と実用性に優れた素材設計が施されています。
更に、この混紡比率により、コットン特有の柔らかな風合いとポリエステル由来の軽さ・速乾性が絶妙に融合。
長時間の着用でも蒸れにくく、軽快な着心地を維持する為、日常使いからアウトドアシーンまで幅広く活躍してくれるでしょう。
サイズ表記は "CHEST 112 - 117 cm"
日本サイズで "XL ~ XXL" 程度に該当するかと思います。
実寸値を見ても大きなサイズ感となりますので、大きな体型の方でも問題なくご着用頂けるかと思います。
かなり大きなサイズ感となりますが、ミリタリースモック特有のオーバーサイズシルエットは、現代のストリートファッションとの親和性が非常に高い。
前述の通り、袖先のリブカフスが生地を溜めてくれる為、小柄な体型の方でもバランス良くご着用頂けるかと思います。
擦れ等の使用感はやや見受けられます。
また、袖部のジッパーテープにほつれがありますが、現状ジップファスナーの開閉に問題はございません。
開閉の際は慎重にお取り扱い頂く事で、永くお召し頂けるかと思います。
コアなミリタリーコレクターならお探しの方も多い "SASS" 製の製品群。
比較的浅い年代の製品ではありますが、市場での流通量は極少と言える大変希少な逸品です。
ワードローブとしては勿論、コレクションアイテムとしても申し分ない1着。
国内外問わず滅多にお目にかかれない逸品かと思いますので、探されていた方や珍しいアイテムが好きな方はこの機会をお見逃しなく。