推定90年代頃、HOUSE OF HARDY(ハウス・オブ・ハーディー)製『ナイロン ウェイディングジャケット』になります。
HOUSE OF HARDY(ハウス・オブ・ハーディー)とは、1872年にイングランド北部ノーサンバーランド州アニックで、創業者 "William Hardy (ウィリアム・ハーディー)" が小さな銃器店を開いたことに端を発する、英国フライフィッシングブランド。
ほどなく兄のジョン・ジェームズが加わり、"Hardy Brothers" として事業を拡張。
やがて情熱の矛先は銃から釣具へと移り、英国流クラフツマンシップとエンジニアリングの融合によるタックル作りが始まります。
企業としては時代の変転を経て、1985年に社名を "House of Hardy Ltd." へ、2004年に "Hardy & Greys Ltd." へ改称しました。
1980年代後半、ハーディーはキルティング&ワックスドガーメント工場を買収し、ウェアの内製度を高めます。
フィールドに必要な機能を静かな意匠に落とし込む事に長け、フリースやシャツ、そして実用一点張りのアウターを揃えました。
ハーディーは王室との縁も深く、20世紀以降多数のロイヤル・ワラントを拝受。
近年では国王チャールズ三世による新たなロイヤル・ワラントが発表され、英国を代表するタックルメゾンとしての地位を改めて示しました。
道具の会社が作る日常着。
その立ち位置が、タウンユースでも効く理由と言えるでしょう。
そんなハウス・オブ・ハーディーより、ブランドを代表するウェイディングジャケットのご紹介です。
本来ウェイディングジャケットとは、川に立ち込み(Wading)ながらキャスティングするフライフィッシングの為に設計されたショート丈の実用アウター。
水面に浸かる腰回りを避ける為に着丈は短く、上半身で必要なギアへ素早くアクセスする為の大ぶりなポケットや、防水・防風性、可動域の広さが追求されています。
当個体もその文脈に忠実で、ラグランスリーブにより肩の可動域を確保しつつ、前合わせはスナップボタン留めのストームフラップの下に "YKK" 社製のダブルジップを備えた二重構造。
下側だけを開けて裾周りにゆとりを作る等、状況に応じて通気と可動を細かく調整出来る特徴を備えています。
フロント下部には容量豊富なフラップポケットを左右に配置。
フライボックスやグローブを余裕で収納でき、左ポケットには "House of Hardy country wear" の織りネームも。
袖口は、内側にスナップタブ・伸縮ガセットを備えた二重構造で、水滴や風の侵入を抑えながらフィッティングを2段階で調整可能です。
また、裾内側にはドローコードを内蔵し、風の強い環境でも体温を逃しにくい設計。
背面襟下には大型Dリングを装備し、ランディングネットやギアを吊り下げられるのもフィッシングブランドらしい実用ディテールですね。
首元内側には、"HOUSE OF HARDY" のブランドラベルが付属。
タグ内に "MADE IN ENGLAND" の表記がある点からも、当個体は本国イギリスにて生産された1着だと読み取れます。
また、タグには "BY APPOINTMENT TO H.R.H. THE PRINCE OF WALES" のロイヤルワラント表記も確認出来る、当時ならではの重厚な作りが魅力です。
シャツにスラックス、革靴を合わせ、襟を立てて下側だけジップを上げる。
アウトドアを "ドレスの文法" で着る違和感が、個人的にもの凄く好みだったりします。
アウトドアとドレスの緊張関係を楽しみながら、自分だけのバランス点を是非探してみて下さい。
当個体は、"ナイロン" 100%を採用。
軽量で乾きが早く、手に取るとシャリ感のあるドライタッチが心地良い一方、密度の高い織りが生むハリがシルエットに芯を通します。
水辺由来のウェアらしく、飛沫や小雨を気にせず扱え、濡れてもすぐに乾いて次のアクティビティへ移行出来る即応性は嬉しい。
裏側のチェックライニングは肌離れを良くし、空気層を作って快適さをキープ。
機能に裏打ちされた素材選びが、都市でもアウトドアでも頼れる1着に仕上げています。
カラーは、中々見ない "ディープティールグリーン" カラー。
深い森の緑に僅かな青みを含んだ色相で、屋外光では瑞々しく、室内光では落ち着いたダークトーンへと表情を移します。
ナイロン特有の微光沢が水面のきらめきの様な陰影を生み、縫い目や折り返しに沿って濃淡のグラデーションがさりげなく浮かび上がる設計。
チャコールブラウンの襟が温度感のあるコントラストを添え、金属パーツの鈍い輝きが色の深みを一層引き立ててくれます。
水辺の空気を纏ったティールが、ワークやアウトドアの骨太さに上品さを与え、タウンユースでも確かな存在感を放つ絶妙なカラーリングです。
サイズ表記は "M"
日本サイズで "M ~ L" 程度に該当するかと思います。
実寸値を見ても日本人体型に合うゴールデンサイズかと思いますので、幅広い体型の方にご着用頂けるかと思います。
汚れ等の使用感はありますが、着用に問題のある大きなダメージは見受けられませんので、まだまだご着用頂けるかと。
英国が誇るフライフィッシングブランド "HOUSE OF HARDY"
実釣用に培われたディテールがそのまま街で活きる、今探すと意外と見つからない名作で、 "短丈 × ダブルジップ" の扱いやすさも含め、ワードローブに1着あると頼れる存在でしょう。
フィールドへ、そのまま街へ。
機能が美に還る瞬間を、どうぞワードローブで体験して下さい。