1993年製、南アフリカ国防軍『パラトルーパージャンプスモック』になります。
南アフリカ国防軍(South African Defence Force / SADF)とは、1912年創設の "Union Defence Force(UDF)" を前身とし、1957年の国防法改正により改組・改称されて誕生した南アフリカの正規軍です。
陸軍・海軍・空軍を中核に1979年には医療部門 "South African Medical Service(SAMS)" が第四の軍種として独立、冷戦期の国家安全保障体制を担いました。
第二次世界大戦後の体制継承を経て、1967年には白人男性に対する徴兵制が全面実施となり、即応戦力の拡充が制度的に加速。
体制転換の1994年、SADFは役割を終えて "South African National Defence Force(SANDF)" へ再編され、旧SADFの兵力・装備にANCの軍事組織 "uMkhonto we Sizwe(MK)" 、PACのAPLA、更に旧各 "ホームランド" 軍が統合される新国軍体制が発足。
そんな南アフリカ国防軍で、空挺部隊のパラシュート兵向けに採用されたスモックのご紹介です。
南アフリカ軍モノらしい無骨さと、90’sらしいギア感が同居した1着。
南アフリカ国防軍の空挺部隊用のパラシュートジャケットとして生産され、『Parachute Jump Smock, Pattern 1988』と呼ばれているモデルとなります。
公式には1988年パターンとして設計され、実際の導入は90年代初頭。
SADFの装備デザイナーである "Mike Du Toit" が手掛けた空挺用被服の一つとされ、肩部やポケット部のキャンバスパッチが蛇の皮を想起させる事から "Slangvel = 蛇皮" の愛称で呼ばれています。
首元は、ジップを上まで上げる事で首を高く覆うスタンドカラー仕様。
フードなどは付かないミニマルなデザインながら、ジップを少し開けて着ればラフに倒れたスタンドカラーとしても機能し、ミリタリーらしい無骨さと都会的な抜け感を両立しています。
収納力も非常に高く、両胸部にはフラップポケット、更に両裾部にも大型のフラップポケットが配置されています。
どちらも下部にカーキオリーブの補強パネルが当てられており、視覚的なアクセントになりながら、摩耗しやすい部分をしっかりとガードする実用設計。
左袖部には、シガーポケットの様なフラップポケットがさりげなく配されており、実用ディテールをさりげないデザインポイントとして成立させているあたりが秀逸と言えます。
ウエスト両脇部と裾部には、2段階調整が可能なスナップタブを備えており、シルエットを絞ってスマートに着るか、ゆったりとしたAラインで着るか、気分やスタイリングに合わせて調整して頂けます。
背面に目を向けると、まず目を惹くのが大きく伸びたビーバーテール。
カーキオリーブの補強生地で切り替えられ、裾から伸びた独特のラインがアクセントに。
着用時には股下をくぐらせ、フロントのスナップに留める事で本来の空挺ジャケットとしての機能を果たしますが、タウンユースではあえて垂らしたまま着る事で、ミリタリー好きにしか分からない "通な" デザインとして楽しんで頂けます。
前合わせは、ジップファスナーによるジップアップ式。
ジップスライダーには "YKK" 社製ジップが採用されています。
首元内側のラベルには、"PARATROOPER JUMP SMOCK / CLANSMAN / 1993" の記載が確認出来、南アフリカ製クランズマン社による1993年の個体である事が分かります。
ラベル内には、『アウターとして着用する事』『暑い時・寒い時のレイヤリング方法』『ジャンプ前にはビーバーテールを必ず留める事』等、実際の運用を想定した細かな指示が英語で記されています。
この辺りからも、単なるファッションアイテムではなく、"実戦を前提" にした官給品ベースの設計思想が伝わってきます。
当個体は、ミリタリーウェアらしいタフさを備えた高密度の平織り生地をベースに採用。
ぎゅっと目の詰まった生地感で、しっかりしたハリとコシがありながらも、手に取るとどこか滑らかさも感じられる質感です。
無骨な印象でありつつも、野暮ったくならないクリーンな表情なので、着込んでいく事でシワやアタリが立体的に浮かび上がり、自分だけの風合いへと育っていく過程も存分にお楽しみ頂けるかと思います。
補強パネルには、リップストップ生地の様な格子状の織りが入ったファブリックを用いており、耐久性を高める機能面は勿論、近くで見ると細かな升目がさりげない陰影を生み出し、無地ながら奥行きのある表情を作り出しています。
カラーは、砂漠地帯を想起させるキャメル寄りのブラウンカラーを基調としたボディに、補強パネルに用いられているカーキオリーブカラーのコンビネーション。
ボディ全体を包むブラウンカラーは、土埃を含んだ様なマットなトーンで、ミリタリー然とした無骨さの中に、どこか温度感のある柔らかさを感じさせます。
そこに、やや退色した様なカーキオリーブの補強パネルが肩・フラップポケット下部・ビーバーテール部に配置される事により、視覚的なコントラストが生まれ、全体をキュッと引き締めるアクセントに。
サイズ表記は "XL"
日本サイズで "XL ~ XXL" 程度に該当するかと思います。
実寸値を見ても大きなサイズ感となりますので、大きな体型の方でも問題なくご着用頂けるかと思います。
ミリタリーアイテムらしく、大きめのサイズ感でご着用頂いても格好良い1着かと。
汚れ等の使用感はありますが、着用に問題のある大きなダメージは見受けられませんので、まだまだご着用頂けるかと思います。
ミリタリーウェアの中でも特異な存在感を放つ、南アフリカ国防軍のジャンプスモック。
その背景には、冷戦期の南アフリカを支えた正規軍『SADF』の実戦装備という、"ただのファッション" では終わらないリアリティが息づいています。
本物志向のミリタリーウェアをお探しの方にこそ、強くお勧めしたい逸品です。