[〜50年代]德國陸軍碎片偽裝傘兵夾克“聯邦政府”

1956年支給、ドイツ連邦軍『スプリンターカモフラージュ パラトルーパージャケット』になります。

スペシャルアイテムの入荷です。

ドイツ連邦軍（Bundeswehr）とは、第二次世界大戦後の冷戦期における西ドイツの安全保障と西側諸国との協調を基盤に、1955年11月12日に正式創設された統一軍です。

創設の背景には、1954年のパリ協定による主権回復と再軍備の枠組み、そして1955年のNATO加盟という国際的合意が位置づけられます。

創設当初、周辺諸国はドイツ再軍備に慎重でしたが、東西対立の激化により、西欧防衛の一角としての役割が明確化。
連邦軍は民主主義の統制原理（Innere Führung）のもとに設計され、軍の存在意義と個々の兵士の権利義務を両立させる制度的基礎を築きました。

編制は、陸軍（Heer）・海軍（Marine）・空軍（Luftwaffe）・サイバー情報領域軍（Cyber- und Informationsraum：CIR）の4軍種に、横断機能を担う共同支援軍（Bundeswehr Joint Support and Enabling Service）と中央医療軍（Sanitätsdienst）が加わる構成。
CIRは2017年に運用開始した最も新しい軍種で、サイバー防衛・情報領域の統合運用を担います。

冷戦終結と1990年のドイツ再統一に際しては、東ドイツの国家人民軍（NVA）を解体し、その人員・装備の一部を選別・統合する「統一の軍隊」への移行が進められました。
これは未曾有の規模・難易度を伴う制度統合であり、再統一ドイツの防衛体制を整える歴史的プロセスでした。

現在の連邦軍は、欧州・アジア・アフリカ・地中海での国際任務に従事し、NATO / EU / 国連の枠組みで安全保障に寄与。
統合後方支援・医療・サイバー領域までを含む総合力を背景に、グローバルな即応力を備えています。

当個体は、当時トラウザーズと同デザインで同時生産され、上下での運用を前提としたセットアップの上衣に該当します。

まず何より強調したいのは、ドイツ軍を象徴するこの "迷彩柄" 。

通称 "スプリンターカモフラージュ" として知られるパターンは、1920年代後半にドイツで開発された4色構成の軍用迷彩で、1931年に国防軍へ初採用されました。

正式名称は "Buntfarbendruck 31（ブントファーベンドルック）" で、1935年に "Splittermuster 31（スプリッターマスター）" へ改称され、ツェルトバーン（幕体）をはじめ第二次世界大戦期の多くの制服に用いられた系譜です。

当個体は、その系譜を踏まえつつ1956年に新たな制服として採用された "1956 Pattern" の迷彩を採用。

生産年代こそ異なるものの、スプリッターマスター特有の破壊的なジグザグ＝鋭角の面処理を継承し、更に迷彩効果を高める為 "レインドロップ" と呼ばれる細かなダッシュを重ねた表現が随所に見られます。
版の意図的なズレが生む白い斑点も残り、戦時型との識別点として機能するディテールです。

この年代のスプリンターには、背景色が淡い青系 / 淡い緑系という少なくとも2種類の特徴的なカラーバリエーションが確認されており、これらの差異が意図的なものか、染料ロットやメーカー差によるものかは未詳とされています。

いずれにしても、1956〜1960年にかけて製造された当パターンはドイツ軍に完全導入される事はなく、主に歩兵部隊・空挺部隊での採用に留まり、1960年末までに大半が運用から退役。

迷彩柄は勿論ですが、ディテールもミリタリーアイテムらしく無骨な印象。

胴部と裾部に計4つのスナップボタン留めフラップポケットを配し、どこかフランス軍の "TAP47" を想起させる端正な設計。

上部ポケットにはそれぞれDリングが付属し、装備の一時固定に対応。
脇下にはベンチレーションホールを設け、内部の蒸れを逃がす実用面も抜かりありません。

前合わせは、ジップファスナーとドイツ軍特有のスナップボタンによる比翼式の二重構造を採用。
ジップスライダーには "riri" 社製ジップを採用し、操作性と信頼性を両立しています。

襟は風の侵入を抑え保温性を高める高め設計の大ぶりな丸襟で、チンストラップ付き。
スタンドさせての着用も実に様になります。

ポケット内側には、サイズ表記や支給年を記したタグが残存。
経年によりスタンプは薄く、正確なサイズ解読は困難ですが、かろうじて "56" の年次は確認可能です。

希少性だけでなく、ファッションアイテムとして見た際の完成度も非常に高い一着。
迷彩を主役に据えて都会的に纏めるのも良し、軍パンやブーツで無骨に振るのも良し。

サイズ表記は確認出来ませんが、日本サイズで "M ~ L" 程度に該当するかと思います。

実寸値を見ても日本人体型に合うゴールデンサイズかと思いますので、幅広い体型の方にご着用頂けるかと思います。
ミリタリーアイテムらしく、大きめのサイズ感でガバッと羽織って頂いても格好良いかと。

元々制服の上から着用する事を想定とした、オーバージャケットの用途で作られていますので、基本的にどの個体に関してもサイズ感は大きくなっています。

生地特有のアタリ・褪色・汚れ・擦れ・ほつれ・小穴・リペア跡・ボタンの付け替え等の使用感はありますが、着用に問題のある大きなダメージ見受けられませんので、まだまだご着用頂けるかと思います。

近年、とりわけドイツ軍アイテムへの注目は一段と高まっています。
一方で、歴史的背景も相まって現存数は極めて少なく、需要に対して供給が追いついていないのが実情です。

熱狂的な愛好家が一定数存在する分野でもあり、コレクターが手放しにくい "垂涎のアーカイブピース" である事は間違いありません。

ワードローブとしては勿論、コレクションアイテム・デザインソースとしても申し分ない1着。
当ショップでも入荷の少ない希少なアイテムとなりますので、お探しの方がいましたらこの機会をお見逃しなく。