2006AW、STONE ISLAND(ストーンアイランド)製『コットンフーデッド ショートジャケット』になります。
STONE ISLAND(ストーンアイランド)とは、1982年に伝説的デザイナーである "Massimo Osti(マッシモ・オスティ)" によって、イタリア・モデナ近郊ラヴァリーノにて始動したメンズウェアブランド。
ブランドの誕生は、当時オスティが携わっていた "C.P. Company" の実験的プロジェクトとして立ち上がったコレクションに端を発し、最初期から一貫して『服 = 素材研究の成果物』という姿勢を貫いてきました。
ストーンアイランドの原点として語られるのが、1982年に登場した "Tela Stella(テラ・ステラ)"。
軍用の防水シート(ターポリン)に着想した屈強な素材を、敢えてストーンウォッシュで叩き、無骨さの中に独特の表情を宿らせた。
この『ミリタリーの機能を、都市の日常着へ翻訳する』発想こそが、ストーンアイランドというブランドの骨格を決定づけたと言えるでしょう。
そして、その完成度を象徴するのが、左袖に鎮座する "コンパス(風配図)" のバッジ。
単なるロゴではなく、探究心と実験精神の旗印として、着る者の価値観までも語らせるシグネチャーです。
オスティが最も執着したテーマの一つが、"色" の作り方でした。
ストーンアイランドを語る上で外せない "Garment Dye(ガーメントダイ / 製品染め)" は、縫製後の完成品を染色する事で、パーツ毎の染まり方の差や陰影、奥行きのあるムラ感までデザインとして取り込む手法。
オスティは1970年代から C.P. Company で製品染めを推し進め、その思想と技術がストーンアイランドの表現を大きく押し上げます。
長年の研究の末に蓄積された染色レシピは、公式に "60,000以上" とも語られる程。
つまりストーンアイランドにおける色とは『カラーチップから選ぶもの』ではなく、『素材と加工の化学反応で掴みにいくもの』。
同じ品番でも微差が生まれ、着用と経年で更に表情が変わっていく。
この "育つ色" こそ、他のブランドでは代替しづらい中毒性の正体です。
更にストーンアイランドは、技術を "ギミック" で終わらせず、あくまで日常着として成立させるバランス感覚が抜群です。
1989年には温度変化で色が変わる感熱素材のジャケット、通称 "Ice Jacket(アイスジャケット)" を発表し、素材実験がそのままプロダクトの魅力になる事を世界に提示。
1990年代以降も、反射素材の研究や、金属的な光沢を持つ "Nylon Metal" 等、ワーク / セーフティ由来の技術をファッションの興奮へ転化するアプローチを継続。
機能性とデザイン性を両立する、正に "着るプロダクトデザイン" を体現してきました。
創設期から連綿と続く『素材を疑い、加工で答えを出す』という思想は、今なおブランドの核として生き続けています。
また、オスティの系譜を辿れば、"C.P. Company" をはじめ、"Boneville" や "Left Hand" といった実験精神の延長線上にあるプロジェクト群へも繋がっていきます。
ストーンアイランドは、その系譜の中でも特に "アウターウェア" という舞台で、素材研究を最もエモーショナルに見せつけた存在だと言えるでしょう。
そんなストーンアイランドより、世界初の染色技術である "ガーメントダイ" が施され、2006AWにリリースされた1着のご紹介です。
クリエイティブを引き継いだ "ポール・ハーヴェイ期" ならではの、ブランドの『素材開発』と『日常着としての機能美』を端的に味わえる一着です。
ポール・ハーヴェイが手掛けるストーンは、デザインで主張するというよりも、テキスタイル開発 / 染色 / 着用時の機能性を最短距離でプロダクトに落とし込むのが流儀。
ミリタリーやワークの文脈を下敷きにしつつ、シルエットはあくまでミニマル。
だからこそ、近くで見た時にディテールが "効いている"
まず核となるのが、ブランド独自のファブリック『RASO GOMMATO』
表情は一見シンプルなコットンサテンですが、タグにもしっかり記載がある通り、内部にラバー(ポリウレタン)層を持つ特殊ファブリックで、風をいなす様な密閉感 と、着用で生まれるシワの陰影が兎に角絵になる。
ギアとしての機能を内に仕込みながら、見た目はあくまで静か。
ここがストーンらしい色気です。
そしてもう一つの主役が、独自の染色技術 『Garment Dyed』
製品染め特有の "染まりのムラ" が、縫い目や端の立ち上がりに自然な濃淡を作り、カラー表記通りのブラック(漆黒が経年でチャコール〜墨黒へと抜ける) へと奥行きを増しています。
褪色や変色すらも、無地の面構えに表情として残っていくのが、この加工の美味しい所ですね。
デザイン自体は非常にシンプルかつミニマル。
だからこそ、ディテールの説得力が光ります。
フード一体型のフーデッドジャケットで、街着として成立する収まりの良さがありながら、ストーンらしい実用ディテールが随所に潜みます。
両裾部には、スナップボタン留めの縦型ポケットを配置。
表面に "スナップを見せない" ミニマルさを優先した設計で、視線に入る情報量を削ぎ落としながら、使い勝手はきちんと残しています。
そして左袖には、ブランドを象徴とする "ウインドローズパッチ" が付属。
トーンの落ち着いたブラックボディに対して、あのコンパスだけが静かに主張するバランスが絶妙です。
袖先は、リブニット仕様。
袖丈に余裕を持たせた作りなので、袖先で生地が溜まるような着用感になり、ショート丈でもスタイリングが軽くなり過ぎない。
前合わせには、ジップファスナーとループによるボタン留めの二重構造仕様。
ジップスライダーには、無刻印ジップが採用されています。
また、本国イタリア製ではなくルーマニア製という点も、寧ろ "安定した縫製と量産精度" が求められる2000年代ストーンらしさとして捉えたい所。
プロダクトとしての完成度に直結する要素です。
そして個人的なポイントは、ストーンアイランドでは珍しい "Sサイズ" という点。
体感では表記 "L 以上" の個体が多い印象だからこそ、小柄な体型の方に特に刺さるサイズバランス。
オーバーに逃げず、素材とディテールの説得力で着る。
そんな着方が出来る一着です。
サイズ表記は "S"
日本サイズで "S ~ M" 程度に該当するかと思います。
実寸値を見てもやや小さめのサイズ感となりますので、小柄な体型の方でしたら問題なくご着用頂けるかと思います。
汚れ等の使用感はありますが、着用に問題のある大きなダメージは見受けられませんので、まだまだご着用可能かと思います。
1996年にマッシモ・オスティ本人がデザインから離れ、後任であるポール・ハーヴェイによって繰り出された当個体。
所謂 "オスティ期" の個体ではないものの、ストーンアイランドらしい、シンプルながらも洗練されたデザイン美は健在です。
派手さではなく、理屈と質感で格好良いストーンをお探しの方に、強くお勧めしたい個体です。
無地で完結しながら、ウインドローズだけが静かに主張する黒。
条件が合う方は、この機会をお見逃しなく。