【~30’s】French Vintage Black Moleskin Hunting Jacket "Homemade"

推定30年代頃、フランス製『ブラックモールスキン ハンティングジャケット』になります。

スーパースペシャルアイテムの入荷です。

フレンチワークの定番アイテムである "Hunting Jacket"

その名に "Hunting（狩猟）" の名を冠しながらも、実際には19世紀末から20世紀中頃のフランスにおいて、主に上流階級の間で狩猟時に着用されていた、機能性と格式を兼ね備えた一着となります。

当時のフランスでは、狩猟は単なる生計手段ではなく、貴族や地主、裕福な工場主等の "特権階級" にとって、社交やレクリエーションの一環として広く嗜まれていました。
その為、このジャケットは農夫や一般労働者向けの仕事着としてではなく、選ばれた階層に属する人々の為に誂えられた背景を持っています。

フランス各地、特にリヨン・リモージュ・トゥールーズ等の都市圏には当時、腕の良い仕立て屋や工房が点在しており、1900年代初頭頃までの個体には、顧客の体型や用途に応じたオーダーメイド仕様のものが数多く存在していました。

当時は既製品という概念がまだ一般的でなかった為、ブランドによる量産は極めて限られており、タグが付属しない個体も多く、職人の手仕事が随所に宿る贅沢なウェアです。

使用されていたファブリックも多岐に亘り、ヘビーウェイトのコットンキャンバス・コットンピケ・コーデュロイ・リネン・ウール・モールスキンといった素材が、狩猟という過酷な環境に対応する為に選ばれていました。

それらは防風性・耐久性・機動性を兼ね備えており、森林や原野での使用に耐える実用性を追求しつつも、着用者の階級を映す洗練された佇まいも備えています。

数あるフレンチワークウェアの中でも、その用途と立ち位置が明確に異なる "Hunting Jacket" は、実用と格式を併せ持つ異色の存在として、今なお高い評価を受けている逸品です。

今なお語り継がれるフレンチワークウェアの中でも、当個体の様な一着に出会える機会は極めて限られると言えるでしょう。

まず特筆すべきは、その生地選定。
ハンティングジャケットとしては異例とも言える、"ブラックモールスキン" 生地が採用された極めて稀少な個体です。

モールスキンといえば、コットン素材でありながら起毛感のある滑らかな手触りと、耐摩耗性を兼ね備えたタフな生地として知られ、フレンチワークウェアにおける定番の一つ。

しかし、ことハンティングジャケットにおいては、コットンピケやコーデュロイが主流であり、ブラックモールスキンを用いたケースは極めて僅少。
それだけにこの組み合わせは、実用性と異色性を両立させた存在として唯一無二の個性を放ちます。

次に注目したいのが、このジャケットが発する "手の痕跡" 。

内タグ等のブランドラベルは一切付属せず、極端に細かい運針や、敢えての様に乱れた縫製ラインからは、機械的な量産とは異なる『個人の裁縫技術』が色濃く感じ取れます。

中でもステッチワークには、あくまでも目的重視で縫い進めた様な不揃いさが見て取れ、その不器用な美しさが、既製品には決して宿らない "人の温度" を帯びています。

その上で、ディテール自体の完成度が高い事もまた興味深い点。

前身頃には大小4つのフラップポケット、背面にはハンティングジャケット特有のゲームポケットと、実用を徹底的に追求した構成。

前立て裏には "耳付き生地" を用いた丁寧な端処理も確認でき、古い織機で織られた当時のファブリックが使用されている事を裏付けます。

更にこの一着が経てきた時間を物語るのが、各所に残るリペアの痕跡。

とりわけ右胸脇のハンドダーニングは、明らかに実用を超えた "修繕の美意識" が感じられ、所有者の深い愛着と手間を惜しまぬ精神が滲み出ています。

ブラックのボディに対し、ホワイトのコントラストステッチが際立ち、視覚的な印象も実に力強い。

擦れ・アタリ・ほつれ・ボタンの付け替え。
これら全てが、『モノとしての価値』を超えて、『生きられた証』としての説得力をこの服に宿らせています。

一着の服が、ただの衣類に留まらず、労働・生活・修繕という人の営みそのものを映し出している。
このジャケットは、正にその象徴的な存在と言えるでしょう。

現代のプロダクトでは到底再現し得ない、"偶然と必然の積み重ね" が形となった奇跡の一着です。

当個体に使用されているのは、"コットン100%" のブラックモールスキン生地。

絹の様な光沢と、鉄の様な堅牢さを併せ持つこの生地は、フレンチワークウェアの象徴的存在。

手に取った瞬間に伝わる、重厚感ある密度と、しっとりとした起毛面の滑らかさ。
細かく織り込まれた高密度の綾織り組織が、まるで鎧の様に外気を遮りながらも、着込むごとに身体に沿って馴染んでゆく、他に替えの効かない素材感です。

経年により浮かび上がるアタリや褪色も、ブラックモールスキンならではの美しさ。

カラーは、漆黒とも呼べるブラックカラー。

静けさの中に芯のある強さを秘めた、深く沈み込む様なブラック。
この色味にこそ、モールスキンという素材が持つ哲学と美意識が凝縮されています。

特に当個体の様に年月を経たモールスキンでは、表面の起毛がほんのりと擦れ、部分的にグレーが浮かび上がる事で、まるで筆で描かれた水墨画の様なグラデーションが生まれています。

この "黒" は、工業的な均質さとは無縁のもの。
着用者の動きや時間の蓄積により、自らの内側から静かに変化していく、言わば『育つ色彩』です。

サイズ表記は確認出来ませんが、"M" 程度に該当するかと思います。

実寸値を見ても日本人体型に合うゴールデンサイズかと思いますので、幅広い体型の方にご着用頂けるかと思います。
ジャストサイズ・オーバーサイズのどちらで着用しても様になるかと。

生地特有のアタリ・汚れ・擦れ・ほつれ・リペア跡・ボタンの付け替え等の使用感はありますが、着用に問題のある大きなダメージは見受けられませんので、まだまだご着用可能かと思います。

フレンチヴィンテージを語る上で欠かせない、マストアイテムでもある "Hunting Jacket"

希少なブラックモールスキン生地に加え、ブランドラベルを持たず、細やかな運針や意図的な縫製の乱れから推察される "Homemade" 仕様という希有な構成。

素材・仕立て・歴史性の全てを兼ね備えた本物を求められる方に、心からお勧め致します。

お金を出せば買えるような代物ではなく、今後入荷できるかも確約が出来ません。

ワードローブとしては勿論、コレクションアイテムとしても申し分ない1着。
国内外問わず滅多にお目にかかれない逸品かと思いますので、探されていた方や珍しいアイテムが好きな方はこの機会をお見逃しなく。